講義テキスト・カリキュラム一覧
本講義は、オープンソースEDA「KiCad 10」を用いたプリント基板(PCB)設計・製造の網羅的ガイドです。設計手順、DRC検証法を確実に学びます。別講座で学ぶLibreLaneによるシリコン設計とともに、アイデアを現実化するためのツールとなります。
序章:製造アクセスコストの劇的変化
相乗り試作(マルチプロジェクトウェハ)前提だった半導体試作の歴史から、5枚数百円で1週間で届く現代の基板製造(JLCPCB等)への大転換までをたどり、個人が自作ハードウェアに手を伸ばせるようになった背景を学びます。
この章を学習する第1章:格安RISC-Vマイコン「CH32V003」の衝撃と回路の最小化
1個数十円という破壊的価格の32bit RISC-V MCUの内部仕様と、パスコン1個だけで動作する驚異の「最小構成回路」の理論的背景を解き明かします。
この章を学習する第2章:作るボードの全体像と、手はんだ前提の部品選び
これから作る「CH32V003 ProMicro互換ボード」の全体像と、実在のオープンソース基板との比較。手はんだ・入手容易・安価を基準に部品を一つずつ選び、KiCadでシンボルを探して並べます。
この章を学習する第3章:グローバルラベルで結線し、ERCで検証する
一本も線を引かずに繋ぐグローバルラベルの使い方を、全結線の早見表とともに習得。部品値の入力、フットプリント割り当て、ネットクラス設定、そしてERCによる論理検証までを行います。
この章を学習する第4章:基本形をどう拡張するか(電源・水晶・USB)
基本形を作れた人のための応用編。「足す/足さない」をどう判断するかを設計思想として学び、電源レギュレータ(5V→3.3V自立化)・水晶・USBの3つの拡張を、シンボルと配線のレベルで解説します。
この章を学習する第5章:基板エディタへの展開と、手はんだを意識した部品配置
回路図からPCBへのデータ転送(F8)。ブレッドボード互換の寸法(列間600mil)を数値で死守し、初心者でも手はんだしやすい配置のセオリーを、具体的な寸法・配置の早見表とともに解説します。
この章を学習する第6章:パターン配線(ルーティング)とDRC(デザインルールチェック)
トラック配線の引き方と、信号・電源で太さを分けるネットクラス、表裏のGNDベタの流し方。LSI設計のDRC思想と共通する、ファブ指定クリアランスを満たすDRC検証とエラー修正を実践します。
この章を学習する第7章:製造データの出力と、基板発注・部品調達の実務
製造工場へ入稿する「ガーバーデータ」の出力。JLCPCB等を活用した格安発注スキームと、秋月電子・LCSCを組み合わせた確実な部品調達フローを、調達リストとともに体系化します。
この章を学習する第8章:実装(引きはんだ)と、書き込みによる基板の検品
フラックスを用いた0.65mmピッチTSSOP-20の「引きはんだ」技能の習得。WCH-LinkEとArduino環境(およびch32fun)による書き込みと、LED点滅を「自作基板の検品」として位置づけて動作を確認します。
この章を学習する第9章:【発展】PCBA(実装代行)による個人量産とサブMCUとしての活用
BOM(部品表)とCPL(位置データ)の出力とファブ在庫連動。地域DX端末の量産化、草の根ハードウェアに学ぶボトムレイヤー直接調達システム設計論を講義します。
この章を学習する本テキストをご利用になる前に
このテキストは、半導体やプリント基板の設計・製造が、かつてのように大きな組織や多額の費用を前提とせずとも、個人の手で扱える時代になったことを、実際に手を動かしながら体感してもらいたいという思いで公開しています。執筆にあたっては内容の正確さに努めましたが、それでも誤りや説明の不足が残っている可能性があります。また、扱うソフトウェア(KiCadなど)や各種サービス、部品の入手性は時とともに変化し、お使いの環境やバージョンによっては、本文の手順通りに動作しないことも起こり得ます。
本テキストの内容を試した結果として生じたいかなる損害・不都合(部品の破損、発注した基板の不具合、費用の発生など)についても、著者は責任を負いかねます。実際に作業される際は、各ツールや製造・販売事業者が提供する最新の公式情報を必ずご自身で確認し、自己の判断と責任のもとで進めてください。
こうした限界をお断りしたうえで、それでも本テキストが、ものづくりに踏み出そうとする誰かの理解の一助となれば、これに勝る喜びはありません。お気づきの誤りや改善点があれば、ぜひお知らせいただけると幸いです。