この読み物について
ここは「作る」講座ではなく、「読む」コーナーです。いま半導体の世界では、AIをきっかけに、地球の歴史のカンブリア爆発になぞらえたくなるほどの大きな変化が起きています。チップの種類が爆発的に増え、それを設計できる人の裾野が広がり、つくり方そのものが変わり始めています。本コーナーは、その全体像を、予備知識ゼロ・専門用語ひかえめ・コードや回路図は一切なしで、たとえ話と「なぜ→だから」だけで読み解きます。「CPUとGPUって何が違うの?」というところから、ゆっくり一緒に進みます。
序章:いま、チップの世界でカンブリア爆発が起きている
5億年前、生命が一気に多様化した「カンブリア爆発」。いま、それと同じ規模のことがチップの世界で起きている――AIを引き金にした“3つの爆発”を入口に、このコーナーの歩き方を見渡します。
この章を読む第1章:チップって、そもそも何をする部品なの?
スマホにも車にも電子レンジにも入っている「チップ」。その正体は、ごく小さな“スイッチの大群”です。専門用語を使わず、「計算する小さな板」の中身を、たとえ話でほどきます。
この章を読む第2章:頭脳の“種”が爆発した ― CPU・GPU・TPU、量子、バイオ
万能選手のCPU、大量並列のGPU、AI専用のTPU、そして原理がまるで違う量子チップや、生体を使うバイオチップ。なぜ用途ごとに“頭脳”を使い分けるのか。多様化の最前線を見渡します。
この章を読む第3章:命令セット(ISA)という見えない契約
同じソフトが、別のチップでは動かない。その裏には、ハードとソフトの間で交わされた“見えない契約”があります。ふだん誰も意識しないのに全員が従っている取り決め=ISAを、やさしく渡します。
この章を読む第4章:その言葉には持ち主がいた ― x86とARMの帝国
チップを動かす“共通語”には、長らく持ち主がいました。使うのに許諾や関所がある世界。中間に立つ者が価値を握る――その構造を見ておくと、次の「開放」がなぜ転機なのかが分かります。
この章を読む第5章:RISC-V ― “言葉”を開いた
「もし、その共通語が誰のものでもなく、無償で開かれていたら?」。バークレーで生まれたRISC-Vの物語。ただし“無料”と“オープン”は違う――うるさい人に刺されないための線引きも、ここで。
この章を読む第6章:トランジスタも“立体”になった ―「2ナノ」は線幅じゃない
平面だったトランジスタが、ヒレ状に立ち上がり、いまや板を積み重ねた立体構造へ。そして「2ナノ」はもう線の幅を指していません。素人が一番だまされやすい数字の正体を明かします。
この章を読む第7章:つくり方の革命 ― ハンコを彫らずに描く
従来のチップ製造は「マスク(原版=ハンコ)」を彫るところから。その関所を外す“マスクレス”の研究と、相乗りで安く作る仕組み。設計の扉が開いたことと対になる、製造側の地殻変動です。
この章を読む第8章:最前線 ― AI、そしてフィジカルへ
推論から、自ら判断するエージェントへ、そして現実世界で身体を動かす「フィジカルAI」へ。ロボット・自動車・宇宙。あなたの手元の小さなチップと、世界の最前線が地続きであることを見ます。
この章を読む終章:広大なフロンティアへ ― だから、自分たちで作ってみることにした
開かれた大地は、強くて、もろい。けれどその先には、広大なフロンティアが広がっています。地殻変動を解説して終わりにせず、本当に個人がチップを作れるのか確かめてみたい――4講座へ続く宣言で閉じます。
この章を読むこの読み物を読む前に
本コーナーは、半導体の世界でいま起きていることを、専門家でない方にも楽しんでいただくための読み物です。正確さには努めていますが、わかりやすさを優先して、細部をあえて単純化している箇所があります。とくに、各社の製品名・世代・性能の数値や、市場のシェア・最新動向は更新と変動が速く、また見方によって解釈が分かれます。本文では特定の数値や断定的な結論を固定しないよう努めており、関心を持たれた事項は、各提供元の一次情報・公式情報をご自身で確認してください。
※初稿は2026年6月です。内容は適宜、更新していきます。読み終えて「自分でもチップを作ってみたい」と思われた方は、最後にご案内するチップ・メイカーズ(4講座)へどうぞ。