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第7章:現物にする(発注と部品調達)

この章の学習のねらい
DRCをゼロにした設計データを、現物の基板にします。製造用のデータ(ガーバー/ドリル)を書き出し、格安の基板工場に発注し、部品を調達するまで――ここまでの流れは、KiCad入門・第7章と同じです。違うのは、今回のボードには電源部(U2・C2・C3・J4)が加わっていることだけ。その分を調達リストに足して考えます。実装(はんだ付け)と書き込みの詳しい手順は、KiCad入門・第8章に譲り、この章では発注と調達、そして完成した基板の写真を残すところまでを扱います。

7.1 製造データ(ガーバー/ドリル)を書き出す

DRCがゼロになったら、工場へ送るためのデータを書き出します。KiCad入門・第7章とまったく同じ手順です。ガーバーデータ(銅箔・シルクなどの各層)ドリルデータ(穴あけ位置)を出力し、まとめてZIPにします。

書き出しの手順(概要)
  1. 「ファイル」→「製造用出力」→「ガーバー」から、必須レイヤー(表裏の銅箔 F.Cu/B.Cu、シルク、レジスト、外形 Edge.Cuts)を出力する。
  2. 同じ画面で「ドリルファイルを生成」を必ず押す
  3. 出力された全ファイルを、1つのZIPにまとめる。
よくある失敗:ドリルファイルの生成忘れ
ガーバー(銅箔・シルク)だけ出して、ドリル(穴あけ)データを生成し忘れる――これは初学者が本当によくやる失敗です。ドリルデータが無いと、ピンヘッダを挿す穴が空いていない基板が届きます。「ガーバー出力」と「ドリル生成」は、必ずワンセットで。両方をZIPに入れてから発注してください。送る前に、KiCad付属のガーバービューアや発注先サイトのプレビューで、一度自分の目で確かめる習慣もつけましょう。

7.2 格安ファブに発注する

作ったZIPを、格安の基板工場(例:JLCPCBなど)のサイトにアップロードします。ドラッグ&ドロップすると、基板のサイズが自動で認識され、プレビューが表示されます。注文オプションは、基本的に標準設定のままで問題ありません(基板厚1.6mm、銅箔厚1oz、表面処理など)。レジスト色(基板の色)は好みで選べます。

価格・納期・製造能力は、必ず最新の公式で確認

基板製造の価格・納期・最小ロット・送料、そして製造能力(最小配線幅・クリアランス・最小ビア径)は、工場・プラン・時期でよく変わります。本テキストの数字はあくまで執筆時点の目安です。実際に発注する前に、各社の公式サイトで最新を確認してください。とくに、第5章5.3で決めたルール値(信号0.3mm・クリアランス0.2mm・ビア0.7mm)が、その工場の製造能力に収まっているかを確かめ、必要ならKiCadの基板設定に反映してからDRCをかけ直します。本ボードの値は余裕があるので、たいていの格安プランにそのまま通ります。

7.3 部品を調達する(電源部を追加)

基板が届くまでの待ち時間を使って、実装する部品を調達します。KiCad入門・第7章と同じく、確実さの国内ルート(秋月電子)と、安さの海外一括ルート(LCSC)を使い分けると効率的です。今回は、基本形の部品に電源部(U2・C2・C3・J4)が加わります。調達リストにその分を足しました。

調達リスト(基本形+電源部)※数量は予備込みの目安
部品値・型番数量の目安入手先・メモ
U1(マイコン)CH32V003F4P6(TSSOP-20)3~5個秋月。名称で検索して確認
書き込み器WCH-LinkE1台秋月。末尾Eが必須
R1チップ抵抗 1kΩ(2012)10個程度LED電流制限
R2チップ抵抗 10kΩ(2012)10個程度SWIOプルアップ
C1チップ積セラ 100nF(2012)10個程度パスコン
D1チップLED(2012)5個程度色はお好みで
J1・J2ピンヘッダ 1×12(2.54mm)2本+予備ブレッドボードの足
J3ピンヘッダ 1×3(2.54mm)1本+予備書き込み端子
U2(電源部)AMS1117-3.3(SOT-223)2~3個5V→3.3V。ピンが大きく手はんだ容易
C2・C3(電源部)チップ積セラ 10μF(2012)10個程度入力側・出力側。両方必須
J4(電源部)ピンヘッダ 1×2(2.54mm)1本+予備5V入力口
通販コードは載せません(変わるので)

通販サイトの商品コードは時期で変わるため、ここでは載せていません。部品名・型番で検索して、現在の在庫品を確認してください。チップ抵抗・コンデンサ・LEDの2012サイズは、LCSCなら100個単位で数十円と安く、基板発注と同時に手配して同梱させると国際送料を節約できます。マイコンや書き込み器などのコア部品は、国内で早く確実に届く秋月電子が安心です。

注意①:WCH-LinkEは「末尾E」が必須
書き込み器には、末尾が「E」の WCH-LinkE と、末尾なしの「WCH-Link」があります。CH32V003に書き込めるのは、末尾Eの WCH-LinkE だけです。間違えて末尾なしを買わないよう、型番末尾の「E」を必ず確認してください。

注意②:チップ部品は「飛んで消える」ので予備を多めに
2012サイズのチップ部品はとても小さく、ピンセットで掴み損ねると、本当にどこかへ飛んで行方不明になります。抵抗・コンデンサ・LEDは、必ず予備を多めに。とくに今回あらたに増えた10μF(C2・C3)は、電源部に2個使うので、少し多めに持っておくと安心です。マイコン本体も、電源の逆挿しなどで壊すことがあるため、数個あると安心です。

7.4 コードから調達情報を起こす(軽く)

ちょっとした補足です。このコースでは結線をコードで書いたので、部品の値や型番は、すでにコードの中にあります。skidlには、ネットリストだけでなく部品表(BOM)向けのデータを書き出す機能もあります。これを使うと、上のような調達リストのもとになる情報を、コードから起こせます。手で表を作り直すより、転記ミスが減ります。

「こういう手もある」という紹介です

BOM出力の関数名や形式は、skidlの版で変わります。ここでは「値がコードにあるのだから、調達リストもコードから起こせる」という考え方だけ知っておいてください。実際の出力方法は、必要になったときに公式ドキュメントで確認すれば十分です。まずは、上の調達リストを見ながら部品を注文するので構いません。

7.5 完成の記録(発注 → 実装 → 動作確認)

基板が届いたら、部品をはんだ付けし(実装の手順はKiCad入門・第8章を参照)、WCH-LinkEで書き込んで、動かします。動作確認は、LEDが点滅すれば「この自作基板は生きている」という、いちばんシンプルな検品です。今回のボードは、書き込み器なしでもJ4に5Vを挿せば単体で動くはずなので、そこも確かめどころです。

この欄は、完成した基板の写真を置く場所です

下の枠は、あなたが発注し、実装し、動かした基板の写真を入れる場所です。画像ファイルを images/ フォルダに置けば、ここに表示されます(まだ無いあいだは、点線の枠が見えています)。

(発注した/届いた生基板の写真がここに入ります:images/board_ordered.jpg)
① 届いた生基板(発注データから作られた基板)
(部品を実装した基板の写真がここに入ります:images/board_assembled.jpg)
② 部品を実装した基板(電源部つき)
(動作確認の写真がここに入ります:images/board_working.jpg)
③ 5Vを挿してLEDが点灯・点滅(動作確認)
動かすときの確認ポイント
  • まず書き込み器(WCH-LinkE)でLED点滅のプログラムを書き込み、点滅すれば基板は生きている。
  • 次に、書き込み器を外し、J4に手持ちの5V(USBやモバイルバッテリー)を挿して、単体で点滅するかを確認する。ここが、今回あらたに足した電源部の効きどころ。
  • 電源は二重にしない――書き込み器と5V入力を同時につながない(第1章・第4章・第5章の注意)。

7.6 次章への橋渡し

この章のゴール
  • ガーバーとドリルデータを出力し、ZIPにまとめた(ドリル生成を忘れずに)
  • 格安ファブに発注した(製造能力と5.3のルール値を照らして)
  • 部品を調達した(基本形+電源部 U2・C2・C3・J4、WCH-LinkEは末尾E、予備多め)
  • 実装・書き込み・動作確認の流れを押さえ、記録の場所を用意した

これで、コードで書いた結線が、機械の配線を経て、手に取れる基板になりました。設計から現物までを、新しいやり方で一周しました。最終章では、少し視野を広げます。いま、世界はこの「コードと自動化でハードウェアを作る」流れを、どう作っているのか。あなたが通った道の先に、どんな動きがあるのかを眺めていきます。